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渡邊秀樹 ヘルズエンジェルス等 アメリカ生活14年間の体験談など 仙台 渡辺秀樹、HELLS ANGELS について
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気配すら  感じられない




かれこれ 9時間



「 むだ金か。。。 」


溜め息も出ない





97年  8月末


当時、

L.L Bean 唯一の 販売店が在った メイン州 Freeport から


北へ 約200マイル ( 約 320km )



最寄の街 Bangor から  山道を1時間以上走り


さらに、徒歩で 30分程 森林の奥に入った  樹の上に


私は居た





8月を過ぎると


ブラック・ベアーは 冬眠に備え

昼間も 積極的に 行動をはじめ、  シーズンが 開幕する



この時は、 私にとって

3度目の ブラック・ベアー HUNTING であった



カナダ国境も さほど遠くない この場所は

北海道最北端、 稚内、と 変わらない緯度で


日没が近づくと 8月末でも肌寒く


Teeシャツに、M65 タイプ のコットン製ジャケットだけでは

ツリー・スタンド上での 静止姿勢が 辛くなって来ていた。。。




。。。 前日の 朝 。。。


HUNTING ロッジに 到着後 直ぐ


私は、 ハンティング・ガイド から 

スコープ無しの ルガーと

スコープ付き ウィンチェスター  両方を 借り

少し離れた オープン・フィールドへ出かけた


地面に 腰を下ろし、 左膝を立てた ニーリング

立ったままの スタンディング、

手首を樹木に当て 銃身のブレを押さえながらの スタンディング と


60m先の樹に ピンで刺した  直径25cmの 紙皿に向かい
 
2種、 3通りの試射を 数発ずつ繰り返す



銃器の 取扱は 慣れており

鹿撃ち用 ワンランク パワーの低い ライフル弾は 撃ちなれていたが


ベアー用  大口径ライフルでの  ターゲット・シューティングは


実は、 この時が 初めて であった





コンパウンド・ボウ ( 狩猟用の ハイパワー・アーチェリー )

しか 所持していなかった 私は


HUNTING ガイドと ロッジ の 予約の際

電話で、 ハッタリ半分  使い慣れている風に


「 1丁 貸してくれないか 」 と 


頼んでいたので


みっともない着弾で、 初心者であることが バレない様


1発目、


未知の反動が  凄まじくない事を 祈り

かなり 真剣に、 集中して  引き金を絞った



鹿撃ち用の それよりも 口径が大きく

パワーのある パウダー( 火薬 ) を使った ライフル弾は


想像通り 反動が大きかったが


2発目からは 要領を得て


20発近くを 次々と 射ち込んだ



「 Good Shot! どちらでも 好きな方を 使ったらいいよ! 」



隣で、 スコープを片手に 着弾を見ていた ヘルパーの 老人が言った



樹木に 銃身の 固定が出来れば

スコープを着けた方が 数段 楽であるし

ここの猟場は  約40メートルの 待ち伏せで、

微調整も 必要無い距離


銃自体が 若干重く、 銃床の長さが 身体に合い

反動が 僅かに少なく感じられたので

私は、スコープごと ウィンチェスターを 借りることにした



スコープ無しでも 辛うじて 全弾命中させていたので


不安だった1発目の リバウンドも手伝い

気分が 高揚してきた



丸1年 待った  HUNTING トリップだった


あとは

大物、トロフィー・サイズに 遭遇するかという事だが。。。





2日目、



夕方 6時を過ぎ



帽子の上から かぶった

メッシュ製 カモフラージュ柄の フェイス・カバーを脱ぎ


カイロ代わり 懐に入れてある

午後の 自分の尿が入った ペットボトルと共に

傍らの デイ・バッグに入れ


蛍光オレンジの ベストを取り出し  身に着け

ツリー・スタンドを 降りる



ツリー・スタンドとは   “ 待ち伏せ ” の 狩りをする時


樹の上に身を隠し、  長時間の待ち伏せと

安定したシューティング・ポジションを 取るに足りる座面を備えた物で


梯子が付いた アルミ製 携行式 の物から



地元のハンターや ガイドが、 ハンティング・シーズン 前に

獲物の 通り道や、 餌場が 見渡せる樹の上に 設置する物で


今回は

この山の樹を 切り出し、 材料にして ガイドが設置した

大き目の ツリー・スタンドであった


同じ山に無い 樹の匂いに  野生動物は 敏感に反応する






私は、はしごを降り、 40m程離れた 風上の 餌場に向かう



銃口を 空を向け  胸の前に持った ウィンチェスターは

セーフティーを外した 撃発状態にしてある 



一日中 注視していた その餌場に  変化が無いのは 当然だが


獲物の 影さえ拝めなかった  ここ2日の鬱憤を 晴らす様に


確認せずには いられない気分であった



シーズン中、 餌場に 人間の匂いを残すのは 御法度であるが


私は、 今回のガイドに 見切りをつけ

明日まで 2泊3日を 予定していた 今回のトリップを

今夜 切り上げると 決めたから 気にしない



山中、何処に居るか分からない 他のハンターからの 誤射に遭わぬ様

カモフラージュ柄の デイ・バッグは 背負わず、 左手に持ち


ロッジの方向へと 山を 下りる 



ひどい落胆と 若干の怒りで 足が 鉛の様に 重い


前日朝の 気分は 何処へやら である





ハンティング・ガイドの 仕事は


シーズンが 始まってからの 具体的な ガイド作業と

シーズン前の  リサーチが 2本の柱だ



この、 シーズン前の リサーチが

ガイドの良し悪しを決める  最も大事な 仕事である



シーズン毎に 地元の山々を 歩き、

あらゆる サインから

それぞれの 動物の 行動半径、 通り道、 水のみ場 等を調べ

ハンターを案内する


獲物によって

その 通り道に 定期的に餌を置き、 ” 餌場 “ を 作ったり

メスの 尿を 特定の木に 塗り付けたりと


ハンターが 獲物に出会う 可能性を高める 最大限の努力をする



ハンターは、

その年に ハーベスト出来る 獲物の数が決められていて

毎年変わるが 通常、 DEER、 BEAR 共に 1頭ずつ


そして、 ルーキー ( 初心者 )以外は  「 トロフィー 」 といって


鹿 ならば そのポイント( 角が枝分かれした 先端の数 )

ブラック・ベアーならば その大きさ、重さで

より 多く、 より 大きい 獲物を 狙うので


小さい熊や、 貧弱な角の 鹿は 見送り、

その年 最多、最大の 1頭 を  ハーベスト しようとする



しかし この日  私は

足元を散歩する  ホワイト・テール ( 鹿 ) を1頭 見ただけで

熊の 足音すら 聞いていない



ガイドに対して

ロッジでの 昨日からの 言動も

どうも 信用に足りる 強い印象が 持てなかった



「 このガイドならば 、大きい獲物と 出遭わせてくれるだろう! 」


そういう 安心感、 プロ意識 を  感じられないでいた


つまり  「 “ ハズレ ” ガイド 」 に 当たってしまった と

私は 感じたのだ




ハンティング・ガイドは


知人、ローカル・ショップの紹介や 、 雑誌の広告等 で 探し

オフ・シーズンに 数件のパンフレット、その年の 料金表を入手


実績写真、 金額、 ロケーション

電話で話した印象 等で 絞込み  決断し

前金の小切手を送り、 予約する



しかし 実際、  開けてみなければ 分からない

ギャンブル的な 要素も 多分に有り


着いてみたところ

田舎のお兄ちゃんに 毛が生えたような者に 当たることも有るし


実績に関係なく

親戚や、友人のガイド、 リベートの高いガイドを

優先的に薦めたりする ショップの店員もいる



そこに、 運や、 自然条件、 動物の気まぐれも 加味されると


毎回、 大きい獲物に 遭遇出来るという可能性は 非常に少ないものだ


そして、短い狩猟期間に 何度も ガイドを確保出来ない 現実もある



例えば、

3ヶ所、シーズン前に 予約を入れておき、前金を 振り込むとする


幸運にも 1つ目のトリップで 大きい鹿を ハーベストすれば

その年の ハンティング・リミット 1頭が それで終わり

残り 2ヶ所は キャンセルしなければならない

前金は 戻って来ない


1-2万円の 話ではなく


セスナで 山間を移動する アラスカ等での ビッグ・ゲーム となると

10万円単位の 損失だ



ガイドの確保、予約は 1回、1回 ハーベスト出来るまで となる


しかし、ハンティング・シーズン 開幕時には

既に、 ほとんどの 優良ガイドや、ロッジが

シーズン 終わりまで 埋まってしまうので


チャンスは 年に 何度も無いものなのである



そして、不思議な事に  この 鹿や 熊たち


普段、 畑を荒らしたり

高速道路脇で 優雅に 草などを食べたりしているのだが


ハンティング解禁! となる その日から


見事に、人間の視界から 消えて 居なくなってしまうのである


これは ハンターなら 誰もが言う事で


“ 野生の直感 ”  の 神秘である



初めの数年は、 ハンティングの 経験を積みながら

信用できる ガイドを見付ける 試行錯誤の 時間であり


信頼と 居心地の良さを兼ね備えた ガイド&ロッジに 出会えると

親子 何代 という、ハンターとガイドの 関係が 出来るのである




。。。 7時頃 。。。


ロッジへ戻り、 屋外で普段着に 着替える


ハンティング用の服は 生活臭が移らぬ様

全て ビニールの袋に入れ 密閉し


ジーンズと、

前日朝の ライフル試射時に着ていた ウインド・ブレーカーを着て

ロッジの中に入る



テーブルで 談笑していた

ブルックリンと バージニアから来ている

5人組の ハンターたちに声を掛けた


皆、どのスポットにも 失望して もう 2度と来ない と言っているが


会社で 4連休を 取って来て

明日から 女房の顔見るのも 嫌なので

ここで 空き缶でも撃って 遊んでいるよ と 小声で話す



私は、 お金が もったいないので 切り上げるが

ブルックリンで ばったり会ったら 飯でも食おう などと言い合い


ガイドの 妻が居る ギャリー( 厨房 )へ 向かう



無愛想に


満足していないので、 今夜 出立する 旨を申告し

前払いしていた 2日目の料金を  全額返金させる



これから 10時間近い 夜の運転のために


目の端に入った コーヒー・メーカーに 手を伸ばしたかったのだが


私は  素早く この場を立ち去る方を 選んだ



駐車場を出て

未舗装の山道から  片側1車線の公道へ 出る



コーヒーと、 運転しながら摂れる スナックを探すため


30分以上  店の1件も見なかった往路とは 反対の方角

北へ  車首を向けた



ガソリンスタンドの ホットドックを 食べる気分では無かったので

GSを 1件 やり過ごし


10分ほど 走らせたところで

小さな 集落に 入った



田舎町、 7時を回っていたので  ほとんどの店は閉まっていたが


コーヒー・メーカーと、

ドーナッツの ラックが見える ドラッグ・ストアーが 開いていたので

その店の前に 車を 滑り込ませる



フレッシュな コーヒーは 期待できないが

木造の 古い建物   惹かれるように 店に入る



改装された 店内は

明るい照明と、 スチール・ラックで 埋め尽くされ


薬から、 文房具、おもちゃ、下着類まで置いてある

ジェネラルストアー ( 何でも屋 ) 的な 店であったが


違和感のある 物が すぐに 目に入った



古い、上半身の ボディーが 1体 

店の奥   鏡の前に 置いてある



「 もう、新しいコーヒーは 淹れないよね!? 」  と


キャッシャーの男に 声を掛けながら 店の奥へ進む



紙を 張子のようにして作られた

50年代以前のもの と思われる そのボディーは

Hanes社の モノであった



面白い物だが

狩りの落胆で その時は 余り興奮もしないまま

店内を  軽く 物色した



キャッシャー脇のカウンターで ドーナッツを 数個を選び

コーヒーを 紙コップに入れ

支払いを済ませてから  切り出してみた



「 私は ニューヨークで 洋服屋を営っているのだが

あの ボディー、$50ドルで 売ってくれないか? 」



安くもなく、 高くもない 値段


上げ下げ無しの 一発勝負だが

田舎町で $50ドルの臨時収入は 大きいハズだ



「 50バックス!? 。。。フーン。。。。、 オーケイ、、 」



少し困惑している顔の 男に 50ドル札を 手渡し


さらに  ひと声 掛けてみる



「 売れ残った下着や、服なんて 無いのかい 」


「 何も無いよ、 前のオーナーが 処分して、地下は殆ど空っぽさ 」


「 見せてもらえないかな、店で使える物があったら 買いたいんだけど 」



強盗とは思っていない様だが

少し オドオドした様子の 男に


ハンティングの為 休暇で来た経緯を話しながら 地下室に下りた



ガランとした コンクリート打ちっ放しの地下室は キレイに掃除され

キャンディー・バーや、 ハンド・クリーム類の ダンボールと

使っていない什器が  多少在るだけであった



まあ、 運の無い日は 全てに こんなものだ  と


地上に 上がるため 振り向いたとき


地下に下りる 階段裏側の棚

大きな ジーンズが無造作に掛けてあるのが 目に入る



「 あれは? 」 と尋ねると


男が 店を 引き継いだ後、 事務所のロッカーに残っていたので

地下室に 降ろしておいたのだ と言う



承諾を得て 手に取ると

フラッシャーつき、革パッチの 502S XXであった



ディスプレー用、 W76インチで

汚れひとつ 無い



テンションが わずかに 上がりかけたが


まだ

失意の猟師から、 買出し屋へ  気持ちが 切り替えられないでいた



また それが


冷静さを保つ 手助けに成っていたのかもしれないが。。



薄暗い 地下室で

私は  ヘタに男を興奮させない  低い金額を  提示した



頷かない



倍にする



頷かない。。。



「 オーケイ、 じゃあ マネキンだけ 貰って行くよ 」


私は そのまま ゆっくりと 階段を昇って 地上へ上がり

Hanesの ボディーを取りに 店の奥へ向かった



男は、背後から ジーンズを 持って 付いて来ていた



現金にしたいのだ



私と 向き合うと


「 さっきの金額 プラス 50ドルで どうだ? 」 と言う


私は  少し呆れた表情で  承諾し


現金を 渡して   素早く その店を立ち去った




まあまあの 収穫


ヘインズのボディーも あらためて見ると 悪くない



帰り道、   Bangor を過ぎ


車を 運転しながら

502S ダブル・エックスの 細部をチェック していると



徐々に 収穫の喜びが  沸いて来た



古着の方は、 良い風が 吹くかもしれない



ポートランドに 1泊し、

買い付けをしながら ニューヨークへ 戻ろう



そう決めた 私の 頭の中


不愉快な 猟の結果は

すでに 何処かへ 吹き飛び



ツリー・スタンドの下


私の足元を  悠然と 歩き過ぎて行った

ホワイト・テールの  毛並み、 大腿部の 筋肉の動き


全身から 溢れ出る



野生動物の 神々しさだけが



フラッシュバック する






















= END =



エッセイ風 に成ってしまったが



アメリカでの 趣味は?  と 尋ねられたら



私は、


30歳位までは フィッシング & ハンティング と 答えただろう



ハーレー、古着、アンティークは


仕事等の からみも有り

純粋な 趣味とは 言えなかっただろうし



空手、剣道 は 私にとって 趣味という 次元のものではない



雑念を入れず、  100% 楽しめていた趣味は


フィッシング & ハンティング トリップ であったと思う



日本には いない魚

日本では、難しい 釣りの スタイル

そして、


ビッグ・ゲーム・ハンティング を


アメリカに居る間   経験しておきたかった




魚釣りは  小学生の頃からの 趣味で


今では 車で行くのも億劫な 隣の市や、町まで

早朝から 独り、自転車をこいで 行ったものだ



アメリカでも

ほとんどの トリップは 独り


暑い夏は 北へ


New York 州、 アップステイトの 山岳地帯

Blue Mountain、 Adirondack Park


山の谷間に 点在する  湖へ


カヌーを 頭にのせ

山々を 越えながら キャンプをして 釣り歩く

この地方独特の クラッシックな スタイル



寒い冬は  FLORIDAに 下り


ポット・ベリー バスや


ソルト・ウォーターでは、 バラクーダ

ジャック・フィッシュ、 ドルフィン( マヒマヒ、シイラの名称 ) から


ハンマーヘッド・シャーク

セイルフィッシュ ( カジキの一種 ) の トローリング




WISCONSIN 州へは マスキーを


OREGON 州 では

淡水魚 自身最大 2m70cmの チョウザメを 釣った




ハンティングは

Bear( 熊 )、 Moose ( ヘラ鹿 )

Deer( 鹿 )、 Boar( 猪 )、 

Rabbit ( ウサギ ) 等を 訪ね


一度は、 試しに


下着から、パンツ、シャツ、ジャケット、

膝丈の レース・アップの ブーツまで


40年代以前の ハンティング・ウェアーで 山に入った事も有る


“ コスチューム・ハンター ” といった トコロだが

雰囲気的には 違和感無く、それはそれで 楽しかった





日本には なじみの薄い 釣り方や、

ハンティング自体の 説明でも かなりの 量になりそうだし


各 エピソードを 書き出せば

本1冊分以上に 成るであろうが


銃器、ツールなどの 細かい仕様や

ハンティングの専門用語等を なるべく省き


私の 、Hunting、Fishing 、 魚、 野生動物 に対する

当時の 心境の変化も 織り交ぜ


どなたにでも 読み易いように

その都度 説明を入れながら  書いてみたいと思う





私が ビッグ・ゲーム ハンティングに 興味を持った きっかけ

ヘッド・ハンター



小説ではあるが


作家 大藪氏の 実体験も 含まれているはずで

10代の 多感な時期   ストイシズム、 男の生き様


多大な影響を受けた 1冊である





(木製ツリースタンドの写真は、私本人当時のもの)
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